「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざ、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
どこか意地悪な響きも感じられるこの言葉。
字面だけ見ると「美味しい秋茄子を、お嫁さんには食べさせたくない」という姑(しゅうとめ)の嫁いびりのように聞こえますよね。
しかし、このことわざには、実は正反対とも言える複数の意味や由来が伝えられています。
この記事では、「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざの様々な解釈、由来、そして現代における意味合いについて、分かりやすく解説していきます。

【北澤篤史先生】
ことわざ・漢字熟語の専門家、ことわざ学会理事。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。
「秋茄子は嫁に食わすな」のポイントまとめ
| ポイント | 内容(ふりがな付き) |
|---|---|
| ことわざ | 秋茄子(あきなす)は嫁(よめ)に食(く)わすな |
| 文字通りの意味 | 秋に採(と)れる美味(おい)しい茄子を、嫁には食べさせるなという意味 |
| 嫁いびり説 | 美味しい茄子を嫁に食べさせたくないという意地悪(いじわる)な解釈 |
| 気遣い・思いやり説 | 茄子が体(からだ)を冷(ひ)やすため、嫁の健康(けんこう)を気遣ったという優(やさ)しい意味 |
| その他の説① | 秋茄子が美味しすぎて、つい独(ひと)り占(じめ)したくなるという説 |
| その他の説② | 昔は茄子の栄養(えいよう)が乏(とぼ)しいと考えられていたため、栄養が必要な嫁には不向(ふむ)きという説 |
| 現在の受け止め方 | 文字通(もじどお)りではなく、ことわざの多義性や文化背景を学ぶものとして捉(とら)えられている |
| ユーモアの使い方 | 「美味しい秋茄子、嫁だけど食べちゃおう!」といった笑(わら)いを交(ま)えた使われ方も |
「秋茄子は嫁に食わすな」とは?基本的な意味
文字通りには「秋に採れる茄子(なす)は、お嫁さんには食べさせてはいけない」という意味のことわざです。
秋茄子は、皮が柔らかく、実も締まっていて格別に美味しいとされています。
そんな美味しいものをなぜお嫁さんには食べさせないのでしょうか?
その理由について、昔から様々な説が語り継がれてきました。
「秋茄子は嫁に食わすな」の由来
有力な説1:【嫁いびり説】美味しいものは嫁にはやらぬ!
最も広く知られ、字面通りに解釈されているのがこの「嫁いびり説」です。
- 理由: 秋茄子は非常に美味しいので、憎い(?)嫁には食べさせたくない。
- 背景: 昔の嫁姑関係の中には、残念ながら良好ではないケースもありました。その文脈で、姑が嫁に対して行う意地悪の一つとして解釈された説です。美味しいものを独り占めしたい、嫁には分け与えたくない、という気持ちの表れとされています。
現代でも、このことわざを聞いて真っ先にこの「意地悪な姑」のイメージを思い浮かべる人は多いかもしれません。
有力な説2:【気遣い・思いやり説】お嫁さんの体を心配して…
嫁いびり説とは全く逆の、お嫁さんの体を気遣う「思いやり説」も有力です。
理由1:体を冷やすから
茄子は、東洋医学的な考え方や経験則から「体を冷やす」性質がある食べ物とされてきました。
秋になり涼しくなってくると、体を冷やす食べ物は体に良くない、特に女性(とりわけ、子宝を期待されるお嫁さん)にとっては冷えは禁物と考えられていました。
大切な嫁の体が冷えて、体調を崩したり、子宝に恵まれにくくなったりしないように、という姑の配慮から生まれたという説です。
理由2:種子が少ないから
茄子には種子がありますが、秋茄子は特に種子が少ない傾向があります。
昔は「種が少ない食べ物を食べると、子宝に恵まれにくくなる」という俗信・迷信がありました。
お嫁さんに子供ができないことを心配し、縁起を担いで秋茄子を控えるように言った、という説です。
この説は、一見意地悪に聞こえる言葉の裏にある、昔ながらの家族の形や健康への配慮がうかがえる解釈です。
その他の説
上記二つの有力説以外にも、いくつかの説が存在します。
【美味しすぎるから説】
秋茄子があまりにも美味しいため、食べ過ぎてしまうのを戒める意味。
または、単純に美味しいから他の人に食べさせたくない(嫁に限らず)という気持ちの表れ。
【栄養価が低い説】
昔は、茄子は栄養価が低いと考えられていた時期もあり(現代では栄養価が見直されています)、栄養をつけなければならないお嫁さんにはあまり食べさせない方が良い、とされた説。
結局、どの説が本当なの?
「秋茄子は嫁に食わすな」の真の由来は、残念ながらはっきりとは分かっていません。
長い年月を経て伝わるうちに、様々な解釈が生まれ、地域や時代によって有力な説も異なってきたと考えられます。
ただ、一般的には「体を冷やすから」という【気遣い・思いやり説】が、本来の意味に近いのではないかと解説されることが多いようです。
もちろん、【嫁いびり説】のような人間関係の側面も、ことわざが広まる一因となった可能性は否定できません。
現代における「秋茄子は嫁に食わすな」
現代では、このことわざを文字通りに受け止めて実践している家庭はほとんどないでしょう。
食文化の変化
食材の栄養価に関する知識も向上し、茄子が体を極端に冷やすという考え方も一般的ではなくなりました(もちろん、食べ過ぎは良くありませんが)。
様々な調理法で美味しく、健康的に茄子を楽しむことができます。
家族関係の変化
嫁姑関係も昔とは大きく変化し、「嫁いびり」という概念自体が古くなりつつあります。
現代においてこのことわざは、主に昔の風習や考え方を伝える言葉として、あるいは言葉の裏にある複数の意味合いを考える面白さを持つ表現として認識されています。
時折、ユーモアを交えて「美味しい秋茄子、嫁だけど食べちゃおう!」といった使われ方をすることもあります。
秋茄子の栄養と美味しさ
ことわざの真意はさておき、秋茄子が美味しいことは事実です。
特徴
夏の茄子に比べて、昼夜の寒暖差によって実が引き締まり、皮が柔らかく、水分量が適度で旨味が凝縮されています。
栄養
カリウム(高血圧予防、むくみ解消)、ナスニン(皮に含まれるポリフェノールの一種、抗酸化作用)、食物繊維などが含まれています。体を冷やす効果も穏やかで、適量であれば健康効果も期待できます。
美味しい食べ方
焼き茄子、天ぷら、煮びたし、麻婆茄子など、様々な料理でその美味しさを堪能できます。
まとめ
「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざは、
- 【嫁いびり説】: 美味しい秋茄子を嫁には食べさせたくないという意地悪な意味。
- 【気遣い・思いやり説】: 体を冷やす、または種が少ないことから、嫁の体を心配する優しい意味。
という、正反対とも言える複数の解釈が存在します。
真の由来は定かではありませんが、「体を冷やすから」という気遣いの説が有力視されることも多いです。
現代では、このことわざを文字通りに捉えることは少なくなりましたが、言葉の背景にある昔の日本の暮らしや考え方、そして言葉の多義性を知る上で興味深いことわざと言えるでしょう。
せっかく美味しい旬の秋茄子。
ことわざの由来を知った上で、ぜひ家族みんなで美味しく楽しんでくださいね!











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